録音して隊長に渡してやりたい



「む」


緑茶を口にした隊長が少しだけ、それこそ隣に座っていた私しかわからないくらい少し、眉をひそめた。
コーヒーを口にして、横目に見れば視線に気づいたのか苦笑い。


「いや、なんだ、ちょっとな」
「ふぅん」


特に気にせずにリーネとお菓子の話しをしているらしいサーニャを見詰める。
たのしそうだ。内容はさっぱりわかんないけど。女の子ってのは甘いものが大好きなんだって誰かが言ってた。
最近は、宮藤を間に挟まなくてもサーニャはリーネと話すことが出来ている。いいことだ。うん。


「む……、んん……」


隣から聞こえるうめき声の変化形。
おいおい。


「何だよ、少佐」
「エイラ、ちょっとこれを飲んでくれ」
「えー?」


湯呑を真顔で手渡されて、あまりに真剣だったものだから渋々一口。
ヴぇ。相変わらず、なんていうか、微妙な味だ。


「どうだ」
「どうもこうも、いつもの緑茶だろ」
「ふむ」


宮藤が淹れてたやつだ。
私のコーヒーは自分で淹れた。あいつ、胃がどうとかいって牛乳入れようとするからな。
湯呑を返して、コーヒーを一口。渋みと言っても全然違う。私はこっちの方が断然好きだ。


「で、どうしたんだって」
「いや、それが」


照れ隠しなのか、そうじゃないのか。
いや、きっと自分でもよくわかってないんだろう。
少佐は、首の後ろ辺りを掻きながら言い放った。


「どうも、ミーナの淹れてくれるものに舌が慣れてしまってな」


固まる。


「それ以外だとしっくりこない」


思わず周りを見回した。
良かった、私しか聞いてない。
下手に誰かに聞かれたら、こののんびりした空気がおじゃんだ。
ていうか。


「いっそずっと淹れてもらうか」


のほほんと言い放っていつものように笑うこのトーヘンボクをどうにかしてくれ。
溜息を、特大のやつを、ひとつ。
ああ、そうだよ。
聞いた私がわるかった。そうに違いない。


「それ、隊長に言ってやれよ」
「何でだ?」
「喜ぶぞー……」


コーヒーを一口。
ブラックなのに甘い気がした。


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