じゃれあい



アイスが食堂にある。
味は早い者勝ち。
部屋着に着替えた直後、そう聞いて駆け出た部屋。
残念ながらサルミアッキ味はなかったけどその中でも目当ての味をゲット。
棒つきアイス。崩れ落ちないように気をつけながら削って、口に広がる冷たさと甘さ。
うん、うまい。
サーニャはハルトマン中尉とどこかに行ってしまっている。
することもなく、部屋に戻ってきて目についたのはベッドに放り出したままの軍服。







じゃれあい







しゃくしゃく。最後のかたまりを喉に通した。
冷たいそれが胃に落ちていくのと、口に残る後味。
なんとなく棒をそのまま咥えて、ベッドの上へ。
サーニャに言われたことがある。綺麗に畳むのね。どこか意外そうだったその言葉。いや、サーニャが脱ぎっぱなしだから畳んでるんだけど。そうは言えなかった。
几帳面だとは思っていない。ただ、きちんと畳むのが普通だと、それこそ何にも考えなくてもそうしてしまうこと。
軍服の上着を手に取って、広げて、見慣れた黒と目があった。

「……何してんだ」

ぱたりと先の白い尻尾が足に触れる。くすぐったい。
上着の襟ぐりから頭を出して、こっちを振り仰いだ黒い狐。
いつの間に出てきたんだよ。
喋ると揺れるアイスの棒の先に鼻先を近づけている。もうねぇよ。

「アイスはだめだかんな」

腹壊しそうだし。使い魔って腹壊すのか知らないけど。
揺れていた尻尾が止まった。アイスの棒の先を舐めてる。だからもうねぇよ。
あー。仕方ないな。

「あとで何か食い物持ってきてやるから」

上着がばさばさ揺れるくらい尻尾が動きだした。
おぉぉおお。お前くすぐったいっつってんだろやめろ。

「ほら、そこどけって」

畳むのに邪魔。
わしわしと頭を撫でれば、やっと潜りこんでいた上着から出てきた。
よし、改めて上着を広げて。そこら辺に座るだろうと思っていた黒が動いて。

「あっ!!」

気付いた時には遅かった。
上着と同じく放り投げられていた白いもの。次の獲物はそれだった。
飛び上がってつっこんだかと思ったら、もうぐちゃぐちゃにじゃれ転がって。

「ぁー……」

重ね履きズボンに絡まったやつが一匹。
絡まったままでこっち見てお座りって。

「何してんだよお前……」

腋に手を突っ込んで抱き上げる。
ぷらりと揺れる白が絡まった黒。
尻尾振ってるし。楽しそうだなおい。
ズボンを取り除いて、ようやく上着とズボンを畳み終えた。
傍でこいつがまだ見てるからなんとなく嫌な予感がする。畳んだの崩すなよ。

「ほら、こっちやるから」

どうせ洗濯に出すつもりだったYシャツを目の前に置けば、咥えて、引き摺って、微妙に整えたその上に。

「今度は寝るか」

丸まった。
ぴすぴす鼻が鳴る。ぐるぐる喉も鳴る。
ご機嫌だな。
首元を撫でる。細まる目。揺れる尻尾。
あー。
なんつーか。
自分の使い魔ながら。

「わけわかんねー」

笑いと共に呟いた。




















「この黒い髪の毛、だれの?」
「えっ」



さーにゃさんまじやきもちやき

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