心が繋がってんだよ言わせんなはずかしい
お正月にする遊びというものは、国それぞれで異なったりするものです。
例えば扶桑で言えば唄にあるように、凧あげだったり、羽子板だったり。
その遊び道具が補給物資の片隅に添えられていたのに気づいたのは、我らがウルトラエース。
「遊ぼうぜ!!」
以下略。
ご丁寧にブリタニア語に換えられて作られたそれをわざわざタタミと呼ばれる扶桑伝統の床材の上に並べていくエーリカさん。
話を聞いてやってきた待機中の隊員たちに伝えられたのはその、カルタと呼ばれるカードゲームのやり方。
何のこともありません。小さな子供もできる遊びです。読み手が読んだそれを示すカードを、掌で抑えつければいい。手に入れたカードが多い人が勝ち。
「読み手は宮藤ねー」
「わかりました」
扶桑出身と言うこともあって慣れているであろう芳佳さんが読み手となり、ゲームはスタートしたのです。
「リベリアン!! 私が先だったぞ!!」
「いーや、見てみろ堅物。あたしの手が下だ!!」
「なにこれおとなげない」
「とったー!!」
「ルッキーニちゃん早い……」
「ふっふーん」
「でもそれ違うカードですよね」
「うじゅ?」
「はい、とーった! にしし」
「ああああ!!!」
「読み手、取り手の一部分を凝視するな」
「っは!!」
なんて、時は過ぎて。
丁度ひと勝負付いた時です。エイラさんがサーニャさんを伴ってその場に現れたのは。
首を傾げていた二人はカルタの説明を受けて、やってみたいと少しだけ瞳を輝かせたサーニャさんに淡く微笑んだエイラさんもまた、参戦。
二人増えた取り手。自然と白熱するはずの戦い。
『はい』
それを微妙な空気に換えたのは、それは、一枚のカルタが読まれた数瞬後でした。
重なったのは掛け声だけではありません。カルタを取るべく伸ばした手も、重なっていました。
それだけならまだ、まだ、先ほどの一戦でもよく見られていたことだったのです。わざとばっしーんとたたいたり何だりもしていたくらい、よく見た光景なのです。
ですが。
「あっ、ご、ごめん、サーニャ」
「ううん……」
「……」
「……」
「えっと、ほら、サーニャが先だっただろ?」
「うん」
なにこのくうき。
二人以外の全員の心が合致しました。
重なってしまった手を慌てて引っ込める二人。そしてそれに若干頬を染めて、視線を逸らしたり。
「えーっと、つぎ、よみますねー」
若干の頬の引きつりを自覚しながら一応ことを進めようとした芳佳さんをグッジョブと称えたことでしょう。二人以外は。
しかし、それは一度きりではなかったのです。
『はい』
「……これは、エイラ、だね」
「あ、うん……」
『はい』
「えっと、どうぞ、サーニャ」
「……うん」
『はい』
「……」
「……」
謀ったかのように、二人の近くにあるカルタが読まれる度にこの空気を醸し出されては堪ったものではありません。
ついにはちょっと見詰めあったりなんかしちゃって。慌てて逸らしたりしちゃって。
なんだおまえら。
「あのさぁ」
業を煮やしたのでしょうか、それにしてはニヤニヤしたエーリカさんは二人の視線が自分に向くと同時に言います。
「わざと? 当て付けってやつ?」
またしても、二人以外の心が合致した瞬間。
「違う!!」「違います!!」
真っ赤な顔で響いた否定は、またしても重なりました。