「え、エイラさんこれまずくないですか」
「めっちゃ怒ってんなぁ」
「何でそんなにのほほんとしてるんですか!」
「あー?」

んにゃおあおあおおおおおあ!!!
普段じゃ考えられない声量の威嚇は、先だけが白くなった黒の尻尾と、くるんと巻かれた茶色の尻尾を追い払ってしまった。
それを追いかけて見慣れた尻尾も消えていくのを、ぽかんと見ているしかなかった私は、止めようと上げかけていた腰を椅子に落とした。
私の膝の上でご機嫌だったあの子が、何故か敵意を向ける二人の登場。
何でこうなったんだっけ。そう考える必要もない。あの子が二人を私に近づけまいと怒った。それを黒い尻尾がからかって、巻き添えになった茶色の尻尾。そういうこと。
残っていたミルクティーに口を付けて待つこと数分。入口の影から現れたのは、尻尾を揺らしたあの子。
私が気付いたのを見てとったのか、軽い足取りでまた私の膝の上。

「もう、コンセルティナ……」

にゃおん。ふんす。とっても得意気。
眉を下げて見れば、ごろごろと喉を鳴らしている。
追い払いましたよ。
そんな声まで聞こえそう。うん、そうね、追い払ってたよね。

「芳佳ちゃんとエイラさんのこと、嫌いなの?」

んにゃぁ。
濁点が付きそうな、鳴き声。ああ、うん、好きじゃないってことはわかったよ。
丸くなった背を撫でれば、ごろごろ、喉が鳴る。ご機嫌ね。
いつでも傍にいて、いつでも私の味方でいてくれる。このぬくもりに支えられたのは幾度となく。私を選んでくれたこの子には、とても感謝している。あなたが私を選んでくれなければ、あなたがいなければ、私はここにはいられなかった。
傍にいて、ぬくもりをくれて、時々こうして守ってくれて、甘えてくれて、安らぎをくれて、あなたがくれたものは、数え切れないほど。

「頼りない主人だけど、これからもよろしくね。コンセルティナ」

にゃあん。私の頬に鼻先をくっつけてきて、一際はっきりとした鳴き声。うん。ありがとう。
あなたがくれた力で、私は、私の出来得る限りのことをしてみせるから。
だから、これからも力を貸してね。

「あっ、でも、追い払うのはやりすぎよ」

んにゃ。顔を逸らされた。
もう、わかってるの?



【親愛、厚意、満足感、好意、思いやり】

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