近衛家2



「おうか。せーの、で行きますよ〜?」
「せーの、やね〜?そうな」

麻帆良学園女子寮中等部区画3−A棟、某部屋。

『せ〜のっ』

ハモるは幼い子特有の少し高い声。
小声だったものが。

『とおっ!』

意気込んだ声に変わった。

ドボスッ「ぐはッ!!」

土曜日、午前七時。
何かが柔らかいものに落下した音と、部屋の主の苦痛の声が響いた。


−−−−−−


桜咲刹那は昨夜仕事で深夜に帰ってきていた。
本日は休日。
だから、それはもう熟睡していたのだ。
していたのだが。

「ぐ、ぅ、かはっ、・・・・」
「父様起きぃ〜」「父上起きて〜」

熟睡していた刹那の腹にダイビングボディプレス×2を喰らわせたのは。
もちろんと言うか。

「そ、双那・・・」
「ん〜?父上〜?」
「お、桜香・・・・」
「何〜?父様〜」
「お、前、たち、な、にを、する、んだ・・・」

式神改め、近衛家(婿養子)のちびズ。
命名、早乙女ハルナ。

ちびせつな改め、近衛双那(そうな)、長女(双子)。
命名、母上。

ちびこのか改め、近衛桜香(おうか)、次女(同上)。
命名、母様。

婿養子の抵抗権(し、式神なんですよ!?)は華麗に棄却(ええやん♪)された。

「父上を起こしに来たんですよ〜?」
「お、起こし・・・」
「目ー覚めた〜?」
「覚めすぎて、逆に、意識を失いそうになった・・・」

既に瀕死の刹那。
ベッドに仰向け・・・若干身体を折りながらも、己の腹の上に乗っかっているちびたちを見ていた。
が、慣れとは怖いものだ。
刹那は突然のちびたちの登場にも驚くことがなかった。

「ほら、お腹から降りて・・・」
『は〜い』
「・・・・・・この起こし方は禁止、わかった?」
『は〜い・・・』

ちびたちを腹から降ろし、ベッドから出る刹那。
眠気など吹き飛んでいた。

あの日。
恐怖の呪文(刹那曰く)《マーヌシャ》を木乃香が覚えたあの日から、刹那の不定期パパ生活は始まった。
休日や放課後にいきなり木乃香がちびたちを喚び出していたのだが、その度に刹那はじゃれつくちびたちの面倒を見ていたのだ。
突然の登場に耐性が付くのも頷ける。
立ち上がり、腹・・・・主に内臓系統を気にしながらも刹那は思考していた。

(自分とお嬢様の気とは言え、気配に気付かなかったなんて・・・・気を引き締めねば)

どこまでも真面目な刹那だった。
ちなみにあの日から後日。
知能は比較的高いもののどうやらちびたちは以前、つまり本当の式神の時の記憶があまりないらしく余計に幼児らしくなっていることが判明した。
全ては、術師の要望に答えた極東最強の魔力のせい(刹那曰く)、もしくは魔力のおかげ(木乃香曰く)。
ベッドに座り込んでいるちびたちを見る刹那。

(それにしても・・・・)

無垢な笑顔でこちらを見上げるちびたち。
名前が付けられた経緯は多くは語るまい。
便宜上ということもあるのだがただ強いて言うならば、ちびたちのママが。

「せや、名前付けてあげな」

と言ったことが原因だった。
そこから一騒動あったのだが、割愛させて頂きたい。
そのちびたちの服装を改めて見て、刹那が口を開いた。

「何故パジャマのままなんだ?」

そう、寝起きの刹那はともかく。
ちびたちの格好、フードこそ被ってはいないものの。
双那は鶴の着ぐるみ(つなぎタイプ)。
桜香はコアラの着ぐるみ(同上)。
それぞれのパジャマがコレだった。
ちなみにママセレクト。

「起きてそのまま父様のトコ来たんよ〜」
「そのまま?」
「そうです〜、寝起きドッキリしようと思って〜」
「寝起きドッキリ・・・・また何かに影響されたな・・・?」

どうやら木乃香は昨夜ちびたちを喚び出していたようだ。
大方、一緒に寝たいから、といったところだろう。
・・・・寝起きドッキリを仕掛けるのはパパにのみなのだろうか。

「お嬢様は一緒じゃなかったのか?」
「うちらだけで来たんよ〜」

身支度を開始しながら、ちびたちに問う刹那。
その答えに洗面所に行こうとする足を止める。

「お前たちだけで?」
「母上に父上呼んで来てって言われました〜」
「・・・お嬢様・・・・ちびたちだけなんて危険ですよ・・・」
「うちらえらい〜?」
「そ、そうだな・・・偉いな・・・」
『えへへ〜』

ちびたちは木乃香の部屋から刹那の部屋までの道のりのみ覚えている。
確かにここまで来ることは可能なのだが。
しかし不明な点がひとつ。

「・・・・どうやって私の部屋に入ったんだ?」

ちびたちの身長からいくと、ドアノブに手が届くか届かないか。
確実にドアを開けることは不可能だろう。
ならばどうしてここに居るのか。
そう、部屋に入って来れないはずなのである。
しかも鍵がかかっていたのだから。

「母様に鍵借りて〜」
「まあ、それは予想できたがドアは・・・」
「お仕事帰りの真名お姉ちゃんに開けてもらったんよ〜」
「龍宮・・・ッ!!」

桜香がポケットから出した刹那の部屋の合鍵。
それは木乃香にあげた物であり、そして刹那の脳裏には昨夜仕事を共にし、仕事後に報酬を受け取りに行ったと思われる外見とは裏腹に可愛いもの

大好きな仕事仲間の顔が過ぎ去った。
例の二人にちびたちの存在がばれた翌日にはクラスメイトの全員にこのこと知れ渡り、数名のクラスメイトたちとちびたちは面会を果たしていた。
むしろ果たさせられた。
押しかけで。
押しかけではないものの、真名もその一人であったのだ。
握り拳を作る刹那。
後日からかわれること間違いなし。

「父上〜?」「どないしたん〜?」
「・・・・・いや、何でもない」

しかし。
真名がドアを開けてくれなければ、ちびたちが部屋に入れずに困ったであろう。
そう思い直し、刹那は洗面所に向かいながらも、後で真名に礼を言いに行こうと決めた。
身支度と着替えを終わらせ、刹那はちびたちの傍に行き、言う。

「双那、桜香。とりあえずお嬢様の部屋に戻ろう?」
『は〜い』
「じゃあ、行こう」
「父上〜」「父様〜」
「ん?」

木乃香の部屋に行こうと部屋を出ようとするせつなを呼び止めるちびたち。
刹那が振り向けば。

『だっこ〜』

両手を伸ばしてくるちびたちに苦笑し、刹那は二人を抱き上げた。


−−−−−−


麻帆良学園女子寮、中等部区画、3−A棟、643号室。
そこにやってきた刹那とちびたち。
ちなみに刹那は誰かと会わないように競歩並みのスピードでここまで来ていた。
走らないあたりがちびたちを気にしていると思われるのだが、からかわれるのは御免らしい。

コンコン

「はーぃ・・・・」
「おはようございます。刹那です」
「双那です〜」「桜香や〜」
「いや、お前たちは言わなくても・・・」

室内から聞こえたのは明日菜の声。

ガチャ

「いらっしゃい、と・・・おかえり、かな?」
「えっと、お邪魔します」
「いらっしゃい」
『明日菜お姉ちゃんただいま〜』
「おかえり、ちびズ」

明日菜に迎えられ、こうして室内へと入った刹那とちびたち。
刹那はちびたちを降ろし、明日菜に聞く。

「お嬢様は・・・」
「ああ、朝御飯作ってるわよ」

と、キッチンからタイミングよく木乃香が顔を出す。

「せっちゃんおはよう」
「あ、おはようございますお嬢様」
「ちびちゃんたちちゃんとパパ起こせたんね?」
『うんっ』
「ほかほか」

しゃがんでちびたちの頭を撫でる木乃香。
ちびたちはふにゃりと笑って喜んでいた。
その三人に刹那が近寄る。

「お嬢様」
「ん?」
「ちびたちを単独で部屋の外に出すのはお止めください」
「あかんかった?」
「迷子になったりしたら危険ですし・・・・」
「せやね・・・・。ん、わかった」

忠告。
それを聞き入れた木乃香。
刹那はちびたちは道筋は知ってはいるものの、やはり危険だと考えたらしい。
いろいろな意味で危険だと。
例えば、刹那の内臓とか。
そして刹那は木乃香の足元に居る鶴とコアラを見て言う。

「しかし何故パジャマのまま?」
「着替えさせてからて思たら、急かしてどないしようもなかったんやもん」
「“パパのとこ行く〜!!”って騒いでたもんね」

明日菜の補足が入る。
どうやらその騒ぎによって起こされたようだった。

「ちびズはパパ大好きだもんねー?」
『大好き〜♪』

ちびたちから返ってきたのは見事なハモり。

「ほら、大好きだってさパパ」
「あ、明日菜さん、からかわないでください」
「なぁーに言ってんのよ。娘たちに好かれてるのよ?」
「だから・・・・娘じゃ・・・」
「妻にも愛されまくってるのよ?」
「つ、妻って・・・・っ!!」
「ちびズのママ」

からかうというよりも冷やかしを入れ続ける明日菜。
戸惑う刹那。
そしてそのママはというと。


「双那ちゃんはこっちの服な?」
「了解です〜」
「桜香ちゃんはこっちやで?」
「了解や〜」
「一人でお着替え出来る?」
『出来る〜』
「ええ子やね」

パジャマのままのちびたちに、着替えを渡していた。
ちなみにちびたちの服は全て木乃香が決めている。
基本、色違いのお揃いか、配色が同じでデザインが違う服。
本日は。
双那には白と赤色を基調とした服。
桜香には白と桃色を基調とした服を渡し。
そして再びキッチンへと戻って・・・・・行く前に。

「せっちゃん、ちびちゃんたち見ててな?」
「あ、はい」

刹那にちびたちを頼んでいった。
口論らしきものを止め、ちびたちの元へと向かう刹那と明日菜。
そこには。

「う〜ん」「んしょ〜」

鶴とコアラが脱皮し、新しい衣服に包まれかけていた。
それを見守る二人。
“一人でできるもん”宣言をしていたちびたちであったが。
各自の衣服との格闘が数分続いて。
ついに。

「父上〜・・・っ」「父様〜・・・っ」
「ん?」
『手伝って〜・・・っ』

救援要請。
若干涙声だった。
それを聞いた刹那、そして明日菜は苦笑を浮かべた。

「はいはい」


−−−−−−


無事にちびたちが着替え終わり(着替えさせ終わり)、朝食を摂った後。

「ところで・・・・ネギ先生とカモさんはどこへ?」

刹那は本来居る明日菜と木乃香の同居人たちの事を聞いていた。

「何や急に高畑先生に呼び出されたらしいわ」
「どうせなんかやらかしたんでしょ」
「はあ・・・・」

そんな会話をしている間も。

「父様のお手て〜」
「おっきぃ〜」

木乃香の隣、ソファに座った刹那の腿に座っているちびたち。
今は刹那の手で遊んでいた。

「・・・・・相変わらずめっちゃパパしてるね、刹那さん」
「その動詞はどうかと思うのですが」

刹那を見て明日菜が言ったこの言葉。
“パパしてる”。
活用形は、パパする、パパされる、パパしろ・・・。
中々言い表せない動詞である。

「第一、無視したりするとどうなるか・・・・知っていますよね・・・?」
「ああ・・・アレは凄まじかったわね・・・」

遠い目の刹那と明日菜。
思い出すのはちびたちに名前が付けられたあの日。

「ただいまー」「ただ今戻りやしたぜ」

そんな中、玄関から聞こえる声。
どうやらネギとカモが帰って来たようだった。

「お帰り、ネギ、馬鹿ガモ」「お帰りー、ネギ君、カモ君」
「お邪魔しています、ネギ先生、カモさん」

それに答える三人。
そしてお客に気付いたネギとカモ。

「あ。刹那さん来てたんですね」
「起こされたんだろ?刹那の姐さん」
「ええ・・・」

刹那は苦笑いを浮かべて答えた。

「双那ちゃんと桜香ちゃん、起こしに行けたんですね」
『ネギお兄ちゃんお帰り〜』
「はい、ただいま」

ちびたちに笑顔を向けるネギ。

「お、ちびズご機嫌じゃねぇか」
『カモおじちゃんお帰り〜』
「だから、おじちゃんって呼ぶなって・・・」

そしておじちゃん呼ばわりされ、溜め息をついたカモ。
そしてカモはタバコを取り出そうとして慌てて止めた。
木乃香が超笑顔で見ていたからだ。
以前、ちびたちの近くでカモがタバコを吸ってしまい、ちびたちがケホケホと煙たがっていた時。

「カモ君・・・・?」

木乃香のこの一言で、カモはちびたちの前で禁煙を決意した。
壁に貼られたカモの入魂の一筆。

《命を大切に》

その時にカモが何を感じたのかを、全て物語っていた。

「あ、木乃香さんにお手紙来ていましたよ」
「ん?ありがと・・・・誰からやろ」

ネギが持っていた封筒を木乃香に渡す。
そしてその送り主の名を見て、木乃香が微笑んだ。

「お父様や」
『お爺様〜?』
「詠春様ですか・・・・・お爺様?」

己を拾ってくれた恩人の名が出た刹那は呟く。
が。
その前に自身の少し下で発せられた単語が、あまりにも聞き捨てならなかった。
少し視線を下げ、まずは自分に似ている方へ聞く。

「双那、今なんて言った?」
「お爺様〜」

確認したが、空耳ではなかった。
続いて、君主似の方へ聞く。

「桜香は?」
「お爺様〜」

どうしようもなく、空耳ではなかった。
お爺様:一般的には自身の祖父を指す。

「お嬢様っ!ちびたちに何教えたんですか!!」

もちろんそれを吹き込んだであろうお方に抗議。

「うちがママやったら、お父様はグランパやろ?」
「いえ、だからそう言うことではなく・・・っ」
「せっちゃんにとったらお義父さんやね♪」
「お義父・・・っ!!」

刹那、機能停止。
その間に木乃香は封筒を開け、中身を読んでいた。
ちびたちは木乃香の腿に移り、手紙を覗き込んでいる。

「何やろ・・・あ、写真のお礼やね」
「写真・・・?」
「うん、ほらあの写真送ったんよ」

再起動を完了した刹那の呟きに、木乃香が答える。
その指が指し示すは木乃香の机。
の上にある写真立て。

「あ、あれを送ったんですか!?」
「せやよ」

そこには某人のデジカメによって撮られ、PCで装飾された一枚の写真。
刹那に抱えられたちびたちがピースサイン。
木乃香が刹那の頬にキス。
きょとんとする刹那。
パパが赤面し、慌て出す一秒前が映し出されていた。
ちびたちの横には“双那”、“桜香”と文字が入れられていて。
日付はちびズ命名の日。
どこからどう見ても。
家族(らぶらぶ)だった。
これが詠春の手に渡った。
その事実にもはや絶望の域に達した刹那は、頭を抱えて項垂れていた。

「ああ、なんてことだ・・・」

そんな刹那とは対照的に、物凄く嬉しそうな木乃香。

「母様〜」
「お爺様どんなこと書いてきたんですか〜?」
「読んだげるな?」

漢字が読めないちびたちに、木乃香は手紙の内容を音読し始めた。


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前略


式神を上手く召喚できたようで安心しました。

魔力によって式神が生身に近い状態に構築されたと聞いた時には驚きましたが、楽しそうで何よりです。

木乃香自身の式神だけではなく、刹那君の式神まで術を施したんですね。

幼い頃の二人を見るようで、昔を思い出します。

しかし、術を施すことを刹那君に許可は取ったのですか。

ちゃんと了承を貰っているのならいいのですが。

木乃香は一人で何かをしてしまう癖があるので心配しています。

巫女たちにもこの写真を見せましたが「親子みたいですね」と楽しそうに言っていましたよ。

機会があるようなら一度こっちに刹那君と帰ってきなさい。

その時に、式神たち、いや、双那ちゃんと桜香ちゃんに会わせてくれると嬉しいですね。

それでは体に気をつけるんですよ。

学園生活を、楽しみなさい。


草々

○月△日 近衛詠春

近衛木乃香殿


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読み終わった木乃香。
その内容を聞き、刹那を見やる木乃香のルームメイトたち。
そして刹那は顔面蒼白になっていた。
ちびたちが口を開く。

「母上〜」「母様〜」
「ん?」
『難しくてわからない〜』

ちびたちには少し難しかったようだ。
木乃香はちびたちに微笑み、告げる。

「お父様がちびちゃんたちに会いたいて」
『お爺様が〜?』
「そうや。ちびちゃんたちも会いたい?」
『会いたい〜!!』

きゃいきゃいはしゃぐちびたち。
それを優しく見ていた木乃香だが、封筒の中にもう一つ封筒が入っていることに気付いた。
それを取り出し、宛名を見れば。

「あ、せっちゃん。これせっちゃん宛やえ?」
「え゛」

差し出される封筒を震える手で受け取った刹那。
木乃香とちびたちも手紙を見るべく寄って来た。
が、刹那は封筒を見詰めたまま動かない。

「父上〜、開けないんですか〜?」
「読まへんの〜?」
「ぅ・・・・・」
「せっちゃん?」

刹那は恐怖していた。
もし、この手紙に。

“護衛解任”

などと書かれていたらどうしよう、と。
仕えるべき君主にあのようなこと(キス)をされている写真を、よりによってその親、詠春に見られたのだ。
さらに先ほどの木乃香宛の手紙。

“機会があるようなら一度こっちに刹那君と帰ってきなさい”

これが刹那には。

“どうゆうことか説明してもらいますよ、刹那君”

と脳内変換されていたのだ。
だが、このまま読まずにいることも出来ずに、刹那は震える手で封筒を開き、手紙に目を通した。


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前略


刹那君、木乃香が迷惑を掛けているようですまないね。

式神のことは木乃香から聞いたが、もし君の了承を得ずにしていたのなら、申し訳なく思います。

だが許してやって欲しいのです。

君といる時の木乃香は、本当に幸せそうだ。

木乃香は君に構って欲しいのですよ。

それをどうか覚えて置いてください。

今度、暇があったら木乃香と一緒に本山に遊びに来てください。

その時にいろいろと学園生活の話を聞きたいものです。

木乃香を、そうですね、双那ちゃんと桜香ちゃんも護ってあげてくださいね、刹那君。

私からの、お願いです。


草々

○月△日 近衛詠春

桜咲刹那殿


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読み終わり、ポカンとする刹那。
父親に見透かされて若干頬を紅くする木乃香。
そしてやはり書いてあることがわからないちびたち。

「刹那さん?木乃香?」
「は、はいっ!?」「な、何?」

明日菜が呼びかければ、我に返り返事をする刹那と木乃香。

「どんな内容だったの?」
「い、いえ・・・見せるようなものでは・・・」

刹那が内容を知られまいと誤魔化そうとしたのだが。

「明日菜お姉ちゃん〜」
「これ読んでください〜」

ちびたちに手紙を奪われ、手紙は明日菜たちの方へ。
止める間もなく、明日菜たち三人に目を通される手紙。
そして。

「よぉーく聞きなさいちびズ」
『うんっ』

明日菜が刹那と木乃香をニヤリと一瞥してからちびたちに言った。

「グランパはママとあんたたちのこと護ってね、ってパパに言ってたのよ」
『おぉ〜』

ちびたちから感嘆の声が漏れた。
それに苦笑するネギと、明日菜同様ニヤリと笑うカモ。

「父様護ってくれるん〜?」
「かっこい〜☆」

刹那に駆け寄り抱きつくちびたち。
そして照れが治まった木乃香はというと。

「せっちゃん、今度お父様に挨拶しに行こか♪」

嬉しそうにちびたちと共に刹那に抱きついた。
ちなみに刹那は真っ赤になったまま硬直していたのは、言うまでもない。
これから数日間。
この手紙ネタで明日菜にからかわれることとなった刹那。
限りなく可哀想である。

頑張れ、パパ。

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