ふぁみりー



私だけが異様に楽しい! という前提を置き、私の私による私のためのマイ脳内ピースフルストーリーです



※大前提

私はフェイトさん至上主義

※注意

美由紀さん好きーは注意

ユーノさん好きーも注意


※十行ぐらいで、いえ、一行目で、むしろ注意でオチが読める仕様です







スクライア司書長ご婚約。
この話は歩きから走りへ、走りから風へ、風から光の速さで時空管理局を駆け廻った。
そしてその相手の名を以ってして、その話題は衝撃波を有し、それが通った後には局員たちの驚愕の声が轟いたのである。






スクライア司書長の婚約者の名を、高町と言った。






時は一週間ほど前までさかのぼる。
その部屋にいたのが誰だったかとか、そんなことはもはやどうでもいい。
無限書庫を含めた管理局のデータを統括する長が在席するその部屋に、無限書庫司書長の役職を持つユーノがいることはさして珍しいことではない。
珍しいことではないが、内容が内容だったのだ。
この時、長のデスクと直結する簡易書庫には長に仕事を頼まれた人がいたのだが、ユーノは知らなかったし、長も気にはしなかった。
きちんとアポイントメントを取り、やってきたユーノ。私事ではありますが。そう前置きしたユーノが口にする。
この度、婚約するに至りまして、その御報告に参りました。と。
日夜本の虫と忙殺されているユーノからの言葉である。長は驚いたが、もちろん喜んだ。
ユーノたちが入籍は、などと話している時。簡易書庫にいる人は混乱を極めていた。
その人がユーノに恋慕していたわけではない。むしろ長と同じくして、喜んでいたほどだ。そうして、いつここから出てお祝いの言葉を掛けようかなどと考えていたほどだ。
だが、混乱をしていた。
ユーノが、婚約者の名を口にしてから、正確には、その姓を耳にした瞬間から他の会話を認識できないほどに、混乱していたのだ。
その人は、ユーノが立ち去ってから、長に狼狽した様子を訝しげに見られたが退室し、どうすることも出来ない混乱をほとんど泣きそうになりながら仲間に吐露した。
ユーノの婚約者の姓。

「高町って言ってた!!」
「なにそれこわい」

それを聞いた仲間たちは揃って真顔になった。
高町。
本局の者ならば知らない者はいないであろう。
その姓はミッドチルダのものではない。管理外世界のものである。
そして、ある意味遠く、ある意味とても身近な姓であったのだ。
エースオブエースを冠する、姓であったのだ。
ユーノと、その姓。関連性など、ごまんとある。そうして、それに付随する噂など、掃いて捨てるほどあった。
あとは人が運んでくれた。
尾ひれなどつけなくてもいい。この事だけで十分な魚だ。大魚である。
スクライア司書長がご婚約。相手は高町。つまり。
高町なのはである、と。
この話題に一番の衝撃を受けたのは高町なのは戦技教導官非公式ファンクラブである。
中には幸せになってくれれば。喜ばしいことだ。と好意的に受け取った者たちもいた。が、大抵は驚愕の一色で、とりあえず何も考えられない状態に陥った。後述するが、とある派閥の者には現実逃避を行うものまでいたくらいだ。今までそういう噂がなかったわけではない。だがそれは噂の域を出なかったのだ。事実として足らしめる情報がなかったのだ。だからこそ、ある種の安心があった。だが今回は違ったのである。その衝撃は、筆舌に尽くしがたい。
そしてそれとは別に、次いで衝撃を受けた非公式ファンクラブがあった。
銘を、フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官非公式ファンクラブといった。
先のファンクラブにも同じことが言えるが、こちらのファンクラブにもとある派閥がある。“相手論争”と呼ばれるものが行われる数多の派閥だ。
その派閥の中では最有力候補であり、それこそ他の追随を許さぬほどであった高町派。その高町教導官がまさかのご婚約。凄まじい衝撃であった。
ファンクラブの者でなくとも、少なからず衝撃を受け動揺する者もいたほどなのだ。
本局は今、何とも滑稽な混乱状態となっていた。
これは由々しき事態である。
だからといってどうしようもない。
ユーノが報告した長は部下の私事を本人の公表前にぺらぺらと話すような人ではない。
野次馬根性で事実を確認するわけにはいかないのだ。
ユーノはまだ婚約を公にしていないのでそれを聞くわけにもいかない。
なのはに聞くことも、同意義だ。
フェイトに聞くことなど、出来るわけがない。
それに近しいものに聞くことも、不可能。
本局を包んだその話題は、悉く、三者には届くことがなかった。
気味の悪い沈黙が守られていたのだ。
だが、居るのだ。
一人は、居てしまうのだ。
それを破る者が現れてしまったのだ。

「スクライア司書長! おめでとうございます!!」
「え?」

その言葉が空気を震わせた瞬間にベストオブ空気読めないの称号を得た局員は、ユーノに笑顔を向けていた。
しかも場はカフェラウンジ。執務官。武装隊。管理職。医療班。後方支援部隊。全てが入り乱れ、人通りの一番多い場所といってもいいだろう。
公開処刑。そんな言葉がよぎる。
その局員は、やはり笑顔を向けたまま、どうしたって地雷の信管である場所を躊躇いなく踏み抜いた。

「ご婚約されたそうで!」

言ったあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
周りの局員たちの絶叫が、それぞれの胸中で木霊する。
賽は投げられた。
無駄に通りの良い声がラウンジを通り抜け、代わりに沈黙が落下する。とてつもない質量の沈黙である。身動きすら取れない。
他の司書たちとお茶をしていたユーノは、少しだけ眉を下げてはにかんだ。

「まいったな……どこから漏れたんだろう」

肯定の、反応である。
周りの局員たちの胸中は計り知れない。各々の叫びが繰り広げられているだろう。もしくは、嗚咽か。
おそらく最初にその話題を耳にした司書たちが脂汗をかいていることすら、ユーノは気付いていないのがせめてもの救い。
ありがとう。と微笑むユーノに、その局員は満面の笑みを向けている。
この二人だけ見れば、平和な光景なのだ。
例え周りの者たちが、皆揃って真顔だとしてもだ。
その静寂に、靴音がひとつ。

「あ、ユーノ君」

ああ、運命とは斯くも意地の悪いものなのだろうか。
周りを少し不思議そうにしながらも現れたのは、白と青の制服、栗色の髪、蒼の瞳。
高町なのは。その人であった。
ユーノの前にいた局員が、笑顔をなのはに向けた。予想の問題ではない、これは必然である。

「高町教導官もおめでとうございます!!」
「え? 何がですか?」

局員は、なのはにもそう言った。
周りに緊張が走る。しかして、賽はさらに蹴飛ばされた。

「ご婚約の件、今まさにスクライア司書長からお聞きしました!」

その局員の笑顔を殴り飛ばしたいと幾人かが本気で思っていた。
局員の言葉になのはは綺麗な瞳を数度瞬かせて、ユーノに首を傾げる。

「ユーノ君、言っちゃったの?」
「どこからかばれちゃったんだ」
「あはは……」

苦笑を洩らすユーノに、やはり苦笑を返すなのは。
もう。わかりきっている。この反応。
なのはは、はにかむ。

「えーっと、一応、ありがとう、なのかな」

その返答は、肯定に他ならない。
周りでは、不動を破り、顔を覆う者が出始める。
この頃にはラウンジにさらに人が集まってきていた。
ざわつかないのは、後から来た者に説明をしなくとも見れば状況を理解してしまうからだろう。一様にして真顔になった後、それぞれの反応を見せていた。非常に特殊な状況である。

「ご家族になられるんですからこんなにおめでたいことありませんよ!」

笑顔で花すら浮かばせかねない明るさで話す局員。
もう黙れ。局員に向けてそんな念話すら飛んでいたが彼は魔導師ではないので通じなかった。
なのはとユーノは、顔を見合わせる。

「あ、そっか、結婚したらユーノ君と家族になるんだね」
「そうだね」

こちらも花を浮かばせて微笑み合っている。
一見和やかな会話に見えるそれに、また、靴音が混じる。
なのはが、振り向いて、その蒼に弧を描いた。

「あ、フェイトちゃん!」

もう、神に嘆くしかあるまい。
蹴飛ばされた賽に靴先を触れさせた人。

「なのはにユーノ……、どうしたの?」

運命を冠する人が、フェイト・テスタロッサ・ハラオウンがそこにいた。
やはり周りを少し気にしながらもフェイトは渦中へ歩み寄る。
おそらく一番の緊張が走っただろう。局員は、口を開いてしまった。

「ハラオウン執務官もお聞きになりましたか!?」
「何をですか?」

おい馬鹿やめろ。念話の不協和音は、局員に届くことはない。
緩く首を傾けたフェイトに、局員は弾んだ声を発した。

「スクライア司書長のご婚約です!」

局員たちの阿鼻叫喚を幻聴するかのようだった。
膝から崩れ落ちた局員が出始める。呆然自失とはこのことだろうか。
局員の言葉を受けて、深い瞳を少し丸くし、だがすぐにフェイトは微笑んだ。

「はい、なの……高町教導官からも、スクライア司書長からも聞きました」

局員に向けての言葉は、丁寧なものだった。
おめでたいですよね。と続けた局員にフェイトも頷く。
話の流れによるものか、フェイトは局員からユーノへと視線を向ける。

「聞いた時にも言ったけど、改めておめでとう、ユーノ」
「ありがとう」

微笑みに返ってくるのは、照れたはにかみ。
そうして。
無意識に首を左右に振る者がいる中、フェイトはなのはにも瞳を向けた。

「なのはも、おめでとう」
「あはは、ありがとう」

交わされたのは、同じ微笑みであった。
何故か、自身の中でのフェイトの心情を見出して想い、滂沱するものが出てきた。
混沌。
その言葉が似合う空間が出来あがっていた。
もはや微かな嗚咽さえ聞こえてくる。
三人の様子を、晴れやかな笑顔で見る局員。この局員の未来が気に掛かる。
どうすることも出来ないかと思われたこの状況下。

「いやぁ、ユーノ君が結婚とはなぁー」

床に転がったままの賽を、拾う者が出てきたのだ。
三度。靴音が鳴った。

「先越されてもーたな、フェイトちゃん」

にこりと笑うその表情は、常と変らない。
周りの様子を気にしていないのか、それとも予想の範囲なのか、全て読めない。
八神はやて捜査司令、その人の登場である。
蒼と紅。その二つの色を向けられたはやては、歩み寄り、フェイトの肩を叩いた。

「そうだね。でも、良いことだよ。私も嬉しいし」
「フェイトちゃんは、そう言うご予定は?」
「えっ」

上がる口端と細められた藍色。
はやての問いに、フェイトは視線を泳がせる。

「ぁー、うん、その……、ど、どうだろうね」

フェイトの瞳の色が、頬に移ったようだった。
その返答が、周りにさらなる混乱を招いたのだ。
顔を覆っていた者、膝をついていた者、それぞれの反応を示していた者たちが、目を見開いて固まった。その脳内では様々な仮説と、それに伴う劇的な模擬現出が行われているだろう。度重なる衝撃は心臓も脳も負担が大きいが、そんなことなど関係ないのだ。

「おんやぁ? 歯切れ悪いやん?」
「は、はやて、からかわないでよ」

はやてが意地悪く口元を歪めて詰め寄るが、フェイトは眉を下げるだけだった。
だがその口ぶりとは別に、染まった頬が想像を掻き立てていることに本人は決してわかっていないだろう。
今度はそちらのやり取りに局員たちの意識が向いている中、ユーノとなのはの会話も続いていた。

「うちの実家、今度はいつ行く?」
「次の休みかな。なんだったらヴィヴィオも連れて行こうか? 士郎さんたち会いたがってたし」
「本当? ヴィヴィオに聞いてみるね」
「うん」

司書長と教導官。双方に忙しいのだから、中々休みも合わないのだろう。
当然と言えば当然なのだが、なのはの娘の話もしているところが局員たちの諦めに似た何かを助長させる。
ユーノの提案になのはは微笑んだ。どこか、幼さを含んだ笑みを、浮かべて、言う。

「ありがとう、“お兄ちゃん”」
「や、やめてよなのは……」

時が止まるとはこのことだろうか。
周りの局員たちの視線と意識は、もはや隠すことなく渦中へと向けられていた。
照れるユーノ。
それは問題ではない。

「あ、やっぱり」
「クロノと同じ反応だ……」

どこか楽しそうななのは。目を丸くするフェイト。
そこが問題なのではない。

「「「「「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」」」」」」」

なのはがユーノに向けた呼称が、大問題であった。
統一された意思は、沈黙を破り、疑問として一音を発するに至る。
あまりに想定外のことに、ほぼ吐息に近いものだったが、人数が人数だけにそれは音と成りえていた。
だが、気にするほどのことではない。
なのはは、ユーノに問う。

「それで、ユーノ君うちの籍に入るの? お姉ちゃん何にも言ってなかったけど」
「うーん、実はまだ決めてないんだ。美由紀さんは管理外世界の人だからどうしようかなって思ってて」
「あ、そっか、お姉ちゃんはこっちに戸籍持ってないもんね」

苦笑気味の思案顔をしたユーノに、なのはは納得したように頷く。
ここにいる者に向けたものではない呼称と、新たなる名前が、聞こえた。
もう認識するのには十分な情報量を得ていたはずだが、今までの混乱と衝撃に、局員たちの脳は正しく働いていなかった。

「「「「「「「「「「「「「「えっ」」」」」」」」」」」」」」

次いだ音は、渦中の人物たちが驚く声量を持っていた。
周りを見て、何やら注目されていることを知るユーノたち。
だが誰も何も言わない。こちらを見て、ぽかんと口を空けているだけだった。恐怖すら覚える光景だった。
けれど、一人だけ動いた人物がいた。
ベストオブ空気読めない。その局員だった。

「あ、あの、スクライア司書長のお相手というのは……」

困惑した局員の問いに、ユーノとなのはは顔を見合わせてから、どうしてそんなことを聞くのだろうと、至極不思議そうにした。

「私の姉です」「なのはの姉だよ」

高町。偽りは、ない。
きっかり五秒後。
本局はラウンジを中心に震撼する。

「「「「「「「「「「「「「「「「「「ええええええええええええええええええええええええ!?!!?!?!?!?!」」」」」」」」」」」」」

はやて司令官が笑いをこらえすぎて呼吸困難になりかけていた。













「まさか君がなのはの義兄になるとはな……」
「何だい、羨ましいのか?」
「そんなわけないだろう」
「君にも可愛い義妹がいるしね」
「ふん」


「なぁなぁ、お二人さん」
「「ん?」」
「もしかしたらどっちの義妹もお二人さんの義妹になるかもしれへんで」
「「はあ?」」


「義妹の伴侶」
「「……!?」」



こうしてエイ美由による「うちの旦那がさぁ……」って愚痴言い合う親友コンビの誕生ですよ

そして始まる僕の妹がこんなにも可愛いシリーズである嘘です
でもきっとお兄ちゃんズ絶対しすこんじゃん、こんな妹いたらしすこんじゃん
妹と喧嘩しちゃったりしたらお兄ちゃんズ絶対裏でうちの妹が怒ってる件についてって相談してると思うよ
くっそ楽しいよ

どうにかしてユーノ君をいい感じに収められないものかと考えに考えた結果がこれだよ!
はい、はい、マジすみませんでした
でもこの治まり方が一番私の脳内で平和やったんや……バランスが良かったんや……

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