アフター9

 


「パパ」
「うん?」

それは何気ない昼下がりの出来事でした。
そりゃあもう平和すぎる穏やかな時間。資料に目を通していたフェイトさんが呼び声に顔を向ければ、そこには真っ直ぐな瞳でこちらを見つめるステラちゃん。
フェイトさんが首を傾げれば、つい、と動いた指先が指し示したものは。

“お義父さん!僕に!僕に娘さんをください!!”
“どぅわれが(巻き舌)お前なんぞ馬の骨に可愛い可愛い可愛いk(ry娘をやるか!!”

そんな感じのベッタベタな感じのホームドラマが再放送されていました。
真っ直ぐな瞳はパパを見詰めたまま。

「パパも、ああだったの?」

ステラちゃんがそれから数度呼びかけて、反応が全くないことに気付き、フェイトさんが固まっていることが分かるまでに数分を要しました。






「ねぇ、パパ。パパは?」
「あー。うん。いや。なんていうかな。ほら」
「パパ?」
「内緒、かなー」
「・・・・・・・・・・・・・」

やっと石化から状態異常回復したフェイトさんはステラちゃんに質問攻めされていました。
言葉を濁したフェイトさんに、潤む臙脂。
慌てるパパ。ステラちゃんを膝に乗せ、頭を撫でて、諭す様に告げます。

「ち、違うよ?ステラだけじゃなくて、ママにも、お姉ちゃんにも言ってない、パパと士郎さんだけの秘密だからだよ?」
「・・・・・・・・・・・・ぱぱ、が、ないしょ、って、わたしにも、ないしょって、いった」
「ぅ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

母親と似た容貌。お姉ちゃんと同じ泣き顔。
それはもうパパの心に大ダメージです。しかしそこは踏みとどまります。
脳にすぎるは、あの日の言葉。

「・・・・・・・・、ダメ、これだけは内緒。パパ、士郎さんと約束したから」
「・・・・・・・・約束?」
「そう、約束。約束は破っちゃいけないって、解るよね?」
「うん・・・・、わかった、内緒なんだね」
「いい子だね」

そこは二人の子供。物分かりの良さは素晴らしいです。
残念そうにしながらも笑ってくれるステラちゃんに微笑み返すフェイトさん。
それはもう微笑ましい親子の光景。

「えー、それはずるいなー、パパ」
「そうだよー、パパ」
「・・・・・・・・・・・・・・、ステラになら言うんじゃないかと思って隠れて立ち聞きしてた二人にも、絶対に、教えません」

に、さらに追撃。
リビングに入ってきたのはママとお姉ちゃんでした。
どうやらパパはわかっていた様子です。
呆れたような視線を物ともせず、なのはさんとヴィヴィオさんはフェイトさんたちに近づきます。

「私も半分当事者なんだから教えてくれてもいいと思うの」
「ダメ」
「私もついていったんだから知る権利はあると思うの」
「ダメ」

妻と長女からの言葉をばっさり切り捨て、ふと感じた視線は目の前の臙脂。
首を傾げた次女。

「私は?」
「・・・・・・・内緒」

言葉に詰まりつつもそう告げたフェイトさん。
しかしそれに抗議が入ります。

「あー!フェイトちゃん、ステラにはちょっと優しい言い方した!」
「ずるい!膝に乗せてるしずるい!!」

なのはさんの抗議もさることながら、何だがずれているヴィヴィオさんの抗議に、フェイトさんは驚いた後に首を傾げます。
ポン、と軽く叩いた膝。

「ヴィヴィオも乗ってもいいよ?」

どうぞ。
さも当然と言い放たれた言葉に今度はヴィヴィオさんが言葉に詰まりました。
少しほっぺを赤にして、妹に視線を向けて、逸らして。

「・・・・・・・・・・・・・恥ずかしいので、遠慮します」
「・・・・・・・・・・」
「残念そうな顔しないでよぉ」

パパは長女にも甘えてほしいようです。

「じゃあ私が」
「え!?」

そしてママは甘えたいようです。
こうしていつもの平和な日常へと戻って行くのですが。

「え?パパが実家に行った時のこと?知りたいんか?」
「はやてちゃん、知ってますか?」

パパが話せないのなら、他の人から聞けばいいじゃない。
そう、知り合いに聞きまくる次女の姿がこの後見られ、パパが物凄く慌てることになるのを追記しておきましょう。

 

お義父さんへのご挨拶はお蔵入り

 
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