アフター6

 


自室のフローリングにぺたりと座って洗濯物を畳んでいる少女。
齢七歳にして自室を与えられた高町家の次女、ステラちゃんです。
学園に進学すると共に、何かこうお家でも何かしなきゃ!的な妙な使命感を得たステラちゃんが今日ママから言い渡されたお仕事は自分の洗濯物畳みでした。
関係ありませんが、やっぱり一人寝はとても寂しいので一人ぼっちで寝ることはほとんどあらず、両親の部屋に行くか、姉の部屋に行くか、はたまたインテリジェントデバイスに添い寝してもらうか、姉が部屋に侵入しているか、大体そんな感じでした。

「ステラぁ」
「何?パパ」

そんなステラちゃんの傍らにしゃがみ込んで何だか情けない声を上げている大人一人。
膝に顔を埋めかねないほど何だか凹んだパパ、フェイトさんでした。
妻の家事を手伝おうとしたら「久し振りの休暇なんだから休みなさい!」と言われて次女の部屋へとやってきていたのです。当家の頂点はママです。

「どうしたの?ママに怒られたの?」
「うーん、怒られたのもそうなんだけどね」

洗濯物を畳み終わったステラちゃんが首を傾げます。
苦笑したフェイトさん。しかしすぐに情けなく眉を下げます。

「ヴィヴィオが最近メールくれないんだ」

先日補佐官に相談したら「あーはいはいわかりましたからこの書類にサインください」と流された悩みを口にします。
パパ、情けないです。

「前はよくくれてたのに、くれないんだ。パパ、嫌われることしちゃったかなぁ」
「お姉ちゃんも、パパのこと好きだよ?」
「うん・・・、そうだと思いたい・・・」

ずーん、と空気を沈ませるフェイトさんにステラちゃんは膝立ちになって近づきます。
まさか、「お姉ちゃん、わたしにいっぱいメールくれるよ?」とは言えません。
フェイトさんにヴィヴィオちゃんからのメールが少なくなったのは、ステラちゃんが通信端末所持を認められたまさにその日からだとはフェイトさんは気づきません。
ステラちゃんはヴィヴィオちゃんと同じくとても空気が読める子に育っていました。・・・・、自分のことに関して以外は。

「パパ、寂しい」
「いーこ、いーこ」

愛娘からメールが来ないだけで凹むパパの頭を撫でる次女。
管理局で羨望と尊敬と畏怖の視線で、それ以上の好意の視線で見つめられる提督の姿は欠片もありませんでした。微笑みかければ医務室が溢れかえるとまで言われた麗しい表情はなく、とても寂しそうな表情です。

「私がパパにメールいっぱいするね?」
「ありがと、ステラ・・・」

パパ、情けないです。










同時刻、高町家リビング。

「ヴィヴィオぉ」
「何?ママ」
「フェイトちゃ・・・、フェイトママが最近メールくれません」
「あー、はいはい、そっかー、それは寂しいねー」
「・・・・・・ついでに娘が冷たいです」
「あれだけラヴラヴなのにそんなこと言われても返す言葉がないの」

ママが長女に愚痴っていました。
後日、何があったかはわかりませんがパパからママへのメールが増えたとか、長女からパパへのメールが送られる様になったとか、次女が長女にお願いしてたとか、そんなことがあったとか、なかったとか。


 

パパ、情けねぇです。

 
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