もしも 5?


詳しい設定は【もしも】を読んでね! ひっどい設定だよ!(すがすがしい笑み






合同作戦。
遺跡より産出された夥しい機械兵士の破壊と、現場制圧。
緊急任務として駆り出されたのは武装隊と、艦隊付属の魔導師たち。
戦場は、もはや乱戦と化していました。
部隊同士の連携がうまくとれず、負傷者の回収に追われる。最初こそ押していた前線ラインは、徐々に後退していくざま。
そんな戦況が変わったのは、かのエースオブエースと、夜天の主が加わった後でした。
混乱した指揮系統は統率され、光球が空を駆ければ連なる爆発。これほどまでに違うのか、と陸と空のエースの実力を実感せざるを得ない局員たちが持ち直し、確実に、終結へと向かう戦いには、桜色以外に目立つ光がありました。
金色。
桜色が防衛ラインだとするならば、金色は敵陣に点在する要所に輝いていました。輝いた後には、暴雷。
大型機械兵士が墜ちていくのを、局員たちはただただ驚愕し、視界の端に収めていました。
何が起きているのかわからないのです。ただ、厄介な敵が次々と墜とされている、その事実しかわからないのです。
見えない。
雷撃以外の金色を、捉えることが出来たのは、おそらく戦況を覆した二人だけ。

「あんまり深追いせんように言っといた?」
「大丈夫。私の目の届かない所にはいかないよ」
「へぇへぇ、躾はバッチリの様で」

個人回線で臨時指令と最大戦力がそんな言葉を交わしていました。
アクセルシューターの光球を無数に浮かびあがらせ、蒼色の瞳が映すのは、金色の軌跡。

「よくできました」

軌跡から逃れるように機械兵士たちが、回避行動を取ります。
爆雷と牽制で動きが制限されたそれらは、計算されたように。

〈Starlight Breaker. Standby Ready... count 9 8 7 6〉

蒼の眼前、一直線に並んでいました。
可能な限りの敵を集めた金色が射線上から離れるのと同時。

〈Starlight Breaker.〉

桜色が、空を焼きました。











作戦は、既に掃討へと切り替わっていました。
遺跡を制圧し、残存機械兵士を全滅させるのみとなっていたのです。
はやてさんが部隊の現状把握に当たっている間、なのはさんもまた残存兵の駆逐に就いていたのです。
そこで、事は起こります。
なのはさんが最大限に己の能力を生かすために保持している防衛範囲。そこに、局員がひとり、入りこんでしまったのです。
それ相応の、手練れの魔導師なら問題はないのです。それこそ、夜天の主の守護騎士の様な。
しかしそうでなければ、遮蔽物。それと変わりありません。
その先が、その人によって、認識する範囲が変わってしまうのです。
早々に離脱すれば問題はないのですが、それだけでは終わりませんでした。
局員に向かって、機械兵士が砲撃魔法を繰り出したのです。
そしてその局員は、それに気付いてすらいませんでした。
なのはさんの行動は、予期されたもの。

〈Protection.〉

「ぐっ……!!」

局員の盾となることでした。
不安定な体勢で受けた衝撃は、なのはさんの顔を少し歪めます。
防御魔法は揺るぐことなく砲撃を消し去ります。目の前に白い背中があることを見て、ようやく守ってもらったということに気付いた局員が、言葉を発しようとした時でした。

〈Plasma lancer.〉

妙に鼓膜に残る、色のない機械音声。
膨大な魔力を感じて振り仰いだ先。そこには、無数の光に串刺しにされた機械兵。
無残なまでに、数多の槍に貫かれたそれは、さながらアイアンメイデン。

〈Break.〉

爆散する欠片を見ながら、呆然としていた局員は、ひとつの黒い影がそこに居るのに気づきます。
二人とさして離れていない、場所。
静かに佇む、幼い少女。黒いマントが揺らめき、その手に握られるのは武骨なデバイス。
金色。
その少女は機械兵士だったものが地に墜ちていくさまに顔を向けていました。
髪で、表情が見えません。その瞳が、見えません。
金糸が、靡きます。
少女が、こちらを、局員を、見ようと。

「ここは任せてください」

しかし局員が少女の瞳を見ることはありませんでした。
局員が見たのは、やはりなのはさんの背中。
その白いBJに隠れて、少女は、もう局員から見えません。はためくマントと金髪が、そこにいるのだということを伝えるだけです。
顔だけ振り向いたなのはさんが微笑みます。

「負傷者のフォローをお願いします」

局員は、ただ短い返事と共に従うことしか出来ませんでした。
自身の防衛範囲から、局員が去るのを待って、なのはさんは視線を戻します。
そこには、ここに居ることを、なのはさんの傍に居ることを許された、金色。

「ありがとう、フェイトちゃん」

その紅が、なのはさんを映したことに、先ほどとは違う微笑みを、本当の微笑みを浮かべるなのはさん。
フェイトさんが、戦斧を握り直す音が、小さく鳴ります。

「あの人……」

逸らされた紅が、なのはさんの背後へ、あの、なのはさんに危害が及ぶ原因となったものを、追って。

「見なくていいよ」

頬に触れた掌が、紅を蒼に引き寄せます。
なのはさんは、より深く、笑みを浮かべました。

「私以外の人、見なくていいよ」

そう言って、目元に指先を滑らせます。
今度は自分の遺志で紅が蒼を映したことを見てとったなのはさんは、頷いて、ゆっくりとフェイトさんの頬から手を離しました。
見回すのは、戦場。

「もう少しで終わるから、頑張ろっか」
「うん」





















滑らかな肌に指を這わせて、なのはさんは満足げに頷きました。

「なのは、嬉しい?」
「うん。とっても嬉しい」

キャミソールをたくし上げて、見下ろしたそこには、もう傷はありません。
お風呂上り。うっすらと熱を浮かびあがらせた肌でも、その痕はもうどこにもありません。
膝に乗せた華奢で細い身体を抱き寄せて、なのはさんは自身が洗ってあげたその髪に鼻先を埋めました。

「フェイトちゃん」
「何? なのは」

耳元での声がこそばゆいのか、肩をすくめるフェイトさんになのはさんは問います。

「ハラオウン家の子に、なりたい?」

それは、総務統括官や艦隊提督から提案されていたこと。
固まる身体から身を離して、見えるのは揺れる紅色。

「……ハラオウンの子になったら、なのはは、私から離れちゃうの?」
「そんなことないよ」

なのはさんの言葉に安堵の息を吐き、それでもフェイトさんの瞳は揺れたままでした。
わからない。と小さく漏らした吐息交じりの答え。
決断を急く必要はない、となのはさんは別の問いかけを口にします。

「フェイトちゃん、ずっと私といたい?」
「うん」

今度は、思考すら挟んでいないと思えるほどの、即答。
笑みを浮かべたまま、フェイトさんの両頬を両掌で包む、なのはさん。

「なら、私以外の人と、上手に付き合う方法、教えてあげる」

ハラオウン家の庇護。なのはさん自身の加護。
その中に住まう、フェイトさん。
だからこそ、この、管理局と言う場で過ごすからこそ。
今のままではいけないと、なのはさんはわかっているのです。
だけれど、幼く、外の世界を知らないフェイトさんは、ただ首を傾げます。

「なのは以外、いらないのに?」

純粋な疑問。
フェイトさんが望むのは、たった、ひとつだけ。唯一、ひとりだけ。
華が綻ぶような笑みで、額と額を合わせ、瞳の奥底まで覗きこむように、なのはさんは言います。

「私ともっと一緒に居るために、必要だから。頑張れる?」
「うん」

返事は揺ぎ無く。
なのはさんは、瞳を細めました。

「今日はお仕事頑張ったから、明日からね」

その言葉と共に、フェイトさんに降り注いだのは、ぬくもり。
吐息を重ねて、離し、瞼を下ろして素直に受け入れるフェイトさんを見て、なのはさんは。

「フェイトちゃん」

親指で、その小さな唇をなぞりながら、言いました。

「口、開けて?」

そして。

「いい子だね」

覗いた紅い舌に、口端を上げました。






私以外、覚えなくていいよ。



やっぱこれ書くのめっさ楽しい。

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