大人と女子高生 2?
パロる。
私が書いてるいつものような性格の子らではない可能性が微レ存ですよ。
それでもいいっていうならどうぞ!
25フェイトさんと、18なのはさん。
良い年齢差だと思わんかね。
放課後に特に用事もなく、真っ直ぐ帰路を往く。
別に、今朝会わなかったなぁとか、帰りは会えるかなぁとか、そんなことは思っていない。
微塵も思っていない。
思ってないったら思ってない。
のだけれど。
歩道に付けて停まった黒塗りの車の後部座席から降りて、車内にいる人に挨拶をしているらしいその人を見つけて足が止まった。
目が肥えていなくてもわかる、上質なスーツ。手に持つ鞄もそうだろう。タイトスカートから覗くのは、黒いストッキングに覆われた美脚。
上品な黒の装いはそれを引き立てるものではないかと思うほどの美しい金髪。誰がどう見ても美人と答える貌。
走り去る車を見送っていた紅が、私を見た。
頬を微かに緩ませたその表情は、誰だって陥落ものだろう。
でも私から出た声は。
「働いてたんですね」
「失礼だなぁ」
その言葉にへらりと笑うこの人は、あのフェイトさんだ。
いつもとギャップがありすぎて、思考が追い付いていかないのに、その笑顔だけで頭より先に心がわかる。
いつもの、フェイトさんだった。
私はこの人のことをよく知らない。知っているのは住んでる場所と、名前。そのくらい。
あまりと言えばあまりの出逢いに、私は混乱していた。その結果口を突いて出たのが、嫌味とも取れるあの言葉だ。ああ、だめだ私。
「これでも多忙なんだよ?」
「その多忙な人がこんな時間にこんな所でなにしてるんですか」
気にしてなさそうなフェイトさんに、また嫌味紛い。
もう少し素直になりなさい。
誰かに言われた気がする。でも、何故か、出来ないのだ。
そんな私の態度に怒ることも、呆れることもなく、フェイトさんはカツンとヒールを鳴らして私を覗き込む。
「なのはの姿が見えたから、食事の誘い断って途中下車」
言葉に詰まる。
それはそうだ。この人が誘われないわけがない。
けど。だぶん。この人はそう言うのを好かない。
そして。その理由が、おそらく、冗談だとしても。
嬉しくないと言えば嘘なのだ。
「高級フレンチ逃しちゃった」
軽く伸びをして、私を改めて見たフェイトさんは、笑う。
「というわけで、お嬢さん、お茶しません?」
まだ言葉を発せない私に、笑う。
「断ったら明日迎えに行っちゃうぞー」
断れない言い訳を作ってくれるところが、わかりにくい優しさが、嫌だった。
こちらの気持ちに気付いてるんだったら、さっさと言ってくれてもいいのに。
私が返したのは、了承と悪態だった。
「あれ、ダイエット中?」
「そうじゃなくて」
洒落たカフェ。
連行されたのは二階席の窓際。常連さんしか入れないらしいところだった。
注文を受けに来た店員さんの頬が赤いのは無視して、しばらくしてテーブルの上に並んだものを前に、私は閉口する。
目の前には、パフェ。
「大丈夫だよ、なのははもうちょっとカロリー摂取しても」
「そうじゃなくて」
「パフェ嫌い?」
「そうじゃなくて」
首を傾げるフェイトさん。
私が聞きたいのはそれじゃない。
「やっぱり実家が喫茶店だと他の店のなんて食べれない?」
「何でうちのこと知ってるんですか!」
「可愛い店員さんがいるって聞いて見に行ったら、なのはだった。手伝い?」
「もおおおお……!」」
さらりと言い放たれた言葉に思わず頭を抱えた。
そうだ。そうだよ。こう言う人だよこの人。
くすくすと綺麗に笑っているのが、むかつく。
脱力。溜息。このままだとらちが明かない。
私は、疑問を口にする。
「フェイトさんは食べないんですか」
私の前には、勝手に注文されたパフェセット。
けれど、フェイトさんの前には、コーヒーだけ。
カップに口をつけながらフェイトさんは言う。
「甘いもの苦手」
何も加えないブラックコーヒー。
甘いものが苦手。
謀らずも好みを知ってしまったことに、ちょっと嬉しくなったことは内緒だ。
「私だけ食べるのは気が引けます」
「あー、じゃあダイエット中ってことで」
「嫌味ですか」
「睨まないでよ」
楽しそうに笑っていたフェイトさんが、私の非難の視線から目を逸らし、外へと向ける。
負けじと私は非難の視線を向け続ける。
「んー……」
面する大通りでも見ていたのだろう。
フェイトさんの視線がまたこちらを向く。
「なのはのガッコーって学年によってリボンの色が違う?」
「へ? ああ、はい」
「なのは、三年だったよね」
「そうです」
問われたのは先ほどの会話とは全く関係のないものだった。
私が在籍する学校は学年によってリボンタイの色が違う。ちなみに三年は赤だ。
何でそんなことを聞くのだろうと考えるも、続く言葉に思考は中断。
「話は戻るけど、甘いものは苦手だし、基本的にどのカフェとかに行ってもコーヒーだけだから」
だから気にしないでということなのだろうか。
言葉はそれで終わらなかった。
「でも一口だけ食べたくなっちゃった」
にこりと上がる口端。
「ちょーだい」
小さく開かれた口と、楽しそうな紅。
フェイトさんの両手は、カップとソーサーに添えられている。
決してスプーンを持ってはいない。
何故って、私が握りしめているから。
えっと。これって。頬に熱が集合する。いいから、集まってこなくていいから。
にやにやとした紅。
ここでうろたえたら相手の思う壺だってことは、経験上知っている。
ので。
「……どうぞ」
「わぁい」
気を利かせてくれたのか何なのか、二本用意されていたスプーン。
空いていた一本を使って、一口。フェイトさんの口に運んだ。
スプーン越しの色んな感触が伝わってきて、どうしようもない。
「ごちそーさま」
「それはこちらの台詞です」
私は、色々と考えないように、奢りと言われて用意されたパフェに未使用のスプーンを改めて刺した。
パフェを食べ終わり、少し雑談しているとメールを着信。
お店の手伝いを頼むという内容を伝えて、私は席を立つ。
御馳走様でしたと頭を下げる。まだここに残るというフェイトさんは私に。
「明日も頑張ってね、高町先輩」
そう、言った。
翌日のことである。
通学路からその兆候はあった。
後輩や同級生から朝の挨拶を向けられるのはいつものことだけれど、何かが違った。
ちらちらと、窺う視線に含まれた何か。
それがわからなかった。
「何かしたかな……」
学校の敷地内に入ってからはそれが顕著だった。
盗み見になってないよ。そう言ってあげたい。
ずびしずびしと刺さる視線に居心地が悪くなりながら上履きに履き替えていると。
“三年A組高町なのは、今すぐ生徒会室まで来てください。高町なのは、来なさい”
「えっ」
校内放送。
聞き慣れた声は、親友のもの。
それはいい。
けれど、最初の一文はまだしも、続いた一文は、これでもかと感情が込められていた。
苛立ちだ。
うわぁ。
アリサちゃんお怒り。
校内放送にさらにざわつく周りを無視して、可及的速やかに私は生徒会長の元へと向かった。
「あんた何したのよ!!」
開口一番これである。
怖いよアリサちゃん。
私だってわかんないよ。
困惑顔の私に、アリサちゃんの怒号が降る。
「高町先輩が大人の物凄い美人と放課後デートって噂が広がってるんだけど!?」
「えっ」
一瞬、真っ白になる頭。
浮かぶのは、一言。
あしたもがんばってね、たかまちせんぱい
「えええええ!?」
時限式の悪戯。
気付いた頃には遅かった。
あの人、本当に性質悪い。