やっと気付いたあれやこれ



二十歳くらいで自分の恋心に気付いちゃう系なのはさんって素晴らしくないですか(真顔
中途半端だよ☆













ふと気付いたのです。
それは何の脈絡もなく、前兆もなく、予感もなく。唐突に落ちてきたのです。














自分以外誰も居ない室内で、その声を出したその人は、ぱちりと瞬きを一つ。
上げた視線の先には、もちろん誰も居ません。
見回しても、居ません。
そうしてやっと、自分が何を言ったのか理解して。

「あれ?」

首を傾げました。
















機動六課解散後。
一軒家を購入した高町なのはさん。
それは娘として引き取ったヴィヴィオちゃんのためであり、生家である海鳴とは違うこの地に腰を据える場所を作ることを望んだからでした。
部屋数やらなんやら、あれやこれや悩んで考えて、家具やら雑貨やらを吟味して、そうして今、表札には高町の姓。
ヴィヴィオちゃんと、母娘の新たなる生活が少し落ち着いてしばらく。
本日も食後のティータイムということで、なのはさんはせがまれながら食器棚に視線を移します。
手に取ったのは、薄い桃色のマグカップと、うさぎ柄のマグカップ。
うさぎ柄の方をヴィヴィオちゃんに渡し、それを掲げて嬉しそうにシンクへと向かう姿に微笑んで、なのはさんはもう一度棚を見ました。
そこに並ぶのは、なのはさんが買った食器類。そして目の前の一角は、コップやマグカップのエリア。セットや無地の来客用が並ぶ中に、異色を放つ、ひとつ。

「あれ?」

シンプルな、黒いマグカップ。
使われてはいないのでしょう。それは静かに据えられていました。
それを買ったのは、紛れもなくなのはさんなのです。
けれど、それを見て、なのはさんは首を傾げています。

「ママ?」
「あ、ううん、何でもないよ」

不思議に思ったヴィヴィオちゃんの呼び声により、なのはさんはキャラメルミルク作りに向かいました。


















オフの日。
普段あまり使わず、きちんと掃除をしない場所を、改めて掃除しようとなのはさんはその一室へと向かいました。
他の場所とは少し違う質感の扉を開ければ、まず目に入るのは壁に設えられた広い棚。そして棚に調和する、大きめのデスク。革張りの椅子。
書斎、と呼ぶにふさわしい部屋でした。
しかしそう呼ばれるには棚は寂しくほぼ全て抜けていましたし、先述の通りほとんど使っていないのです。
なのはさんとてデスクワークもあり、持って帰ってくる書類仕事もあります。けれど、ここを使うことは、それこそ仕事で使うことは、ないのです。
デスクを拭きながら、なのはさんはその事に思い至ります。

「あれ?」

この部屋の必要性に、首を傾げました。























掃討任務。
さして危険度の高くないものとは言え、その緊張感は拭えるものではありません。
幸いにして何の問題もなく任務は完了。
空に佇みながら、なのはさんはゆっくりと息を吐き出していました。
反芻するのは先ほどの、他の武装隊員との連携戦闘。
魔法展開と、発動タイミング、飛行制動、攻撃の緩急、自分のそれらに対するフォローと、同じく空を駆る相手に対するフォロー。
全てにおいてそれぞれの魔導師にとっての、最高のもの、という素晴らしいフォローがあるのです。
思い出す映像と、重ねて過ぎる記憶。

「やっぱり、他の人には無理かなぁ」

突いて出た感想。

「あれ?」

瞬き。小首を傾げて。

〈The affinity is important.〉 相性は大切です。

明滅した紅玉に頷きながら、何に対しての感想かが、なのはさんはわからないままでいました。



















ガレージには、二台分のスペース。
それを何とはなしに見ながら鍵を開けて、帰宅。
着替えのために入った寝室。
ジャケットを脱いで、明日はシーツの洗濯をしようなどと考えて、見下ろしたクイーンサイズのベッド。

「あれ?」

こんなにも広いのに、ベッドの右側で眠ったことがないというのを、気付きました。




















本局。
耳に届いたのは、聞き慣れた名前の、呼び慣れない呼称。
頬を微かに上気させ、その名を紡いでいたのは女性局員。

「ついこの前、会ってね」
「よかったな、憧れの人だろ?」

ある人と会ったというその局員は、同僚であろう男性局員にとても嬉しそうに話していました。
なのはさんに、二人は気付いていません。
開いていたモニターに視線を走らせながらも、立ち聞きするつもりはなくとも聞こえる会話。

「航行任務に行ってるんだと思ってたよ」
「急な任務で本局に来てたんだって」

なのはさんの目の動きが止まります。
瞬き。声は出さずとも、傾げる首。他の人から見れば、見詰める資料に不可解な点があったのだと思うでしょう。
しかし、なのはさんが抱いた不可解は、それではなく。
そんなことは、知らない、という不可解。なのはさんが知らず、あの見知らぬ局員が知っているという、そのこと。
尚も続く、会話。

「自宅に一度帰ったって言ってたけど、もう航行に戻ってるみたい」
「相変わらず忙しい人だよなぁ」

巡る記憶。
この一カ月。
見ていない人。
帰宅していたというその人。
自宅。
そう言えば、ミッドのマンションの一室を借りたと聞いていた。

「あれ?」

今度は音に乗せて、なのはさんは首を傾げました。



























夕食の支度の最中。
宿題を終えたヴィヴィオちゃんが、カレンダーを見詰めて言います。

「なのはママー」

視線を向ければ、娘が紡いだのは、ある人の名前。
カレンダーを指差し、ヴィヴィオちゃんは問います。

「いつお仕事終わるの?」

母娘が見詰めあって数秒。
同時に傾げる首は、違う理由。
ヴィヴィオちゃんは返答がないことに。
なのはさんは。

「あれ?」

答えを知らないということに。

























見上げた戸棚。
手を伸ばして、背伸びをして、ぎりぎり届かない高さにある、必要なもの。
飛行魔法を使えば易々届くそれに、若干の不満。
けれど魔法を使うことなんて出来ないのです。
なのはさんでぎりぎり届かないのならば、なのはさんより背の高い人ならば届くということ。
至極、簡単な答え。
なのはさんは振り向いて。

「ねぇ」

その名前を紡ぎ。

「あれ?」

何故高町家に居ない人の名を呼んだのかということより。
そこに誰も居ないことに、首を傾げました。


















なのはさんは一人、深く思考に潜っていました。
その表情は真剣そのもの。
ここ最近の、いえ、六課解散後からの自分を振り返り、どう考えても不可解なことがひとつ。
なのはさんは首を傾げます。

「何で?」

クッションを抱えてソファに寝転び、天井を見上げて、更に考えます。
考えて。考えて。考えて。
わからなくて。
段々散漫になっていく思考。
今までそれしかなかった頭の中に、隙間が生じます。
無意識に、それ以外のものが入ってきてしまうのです。
そこに入り込んだのは、テレビの、とある音声だったのです。



















夢の部隊。
エースの集まる部隊として、そして例のロストロギアに関しても功績を上げた機動六課。その元部隊長。
八神はやて二等陸佐の執務室に、その人の姿はありました。
空に愛された人。エースオブエース。高町なのは戦技教導官。
この二人と言えばトップエースであり、何よりも親友であることは周知の事実。
昨日。なのはさんから連絡を受けたはやてさんが抱いたのは驚き以外にありませんでした。
親友が見たこともない表情をしていたのです。
泣き。動転。寂しさ。混乱。様々な感情を全てぶち込んでかき混ぜたような表情。
そんな顔で、相談があると、切羽詰まって告げられたら、頷く以外にありません。
そうして、急務を凄まじい早さで片付け、それ以外を放置して向かい合った親友の顔は、昨日と変わりなく。
落ち着かせようと淹れたココアにも手をつけないまま、なのはさんは口を開きました。

「あのね、はやてちゃん」
「うん、なんや?」

固く絞り出された声に、はやてさんは知らず拳を握りしめていました。
短く息を吐き、なのはさんはきゅっと唇を引き締めて、はやてさんを見ます。

「私ね」

果たして紡がれた、言葉。

「フェイトちゃんのこと、す、すき、みたいなんだけど」
「うん」

相槌の後、訪れたのは、沈黙。
それ以外の何物でもなく、この執務室が完璧な防音を成されていることを証明するための様な沈黙。
普段聞くことがない空調の低い音が微かに聞こえるくらいの、静けさ。
俯いてしまったなのはさんに、はやてさんは、長く感じる数十秒を経て。

「それで?」

真剣な表情のまま、続きを促しました。
それに勢いよく顔を上げたなのはさんの表情はもはや泣きそうなものでした。
唇が戦慄き、さらに紡ぎだされる言葉。

「だっ、だから! フェイトちゃんのこと、す、すきみたいなの!!」
「あ、うん」

頬を染めて発される先ほどとほぼ変わらない言葉に、はやてさんはまた頷きます。
少しだけ張り詰めた空気が緩んでいましたが、はやてさんは真剣な表情のまま。

「で?」

その続きを促したのです。
そうして、見開かれる蒼。次いで、藍。

「えっ」
「えっ」

ぽかんと口を空ける理由はそれぞれ。
はやてさんの耳に、空気を張り詰めようと頑張っていた糸がぶちぶちと切れていく音が聞こえた気がしました。
再び沈黙が降ります。しかし先ほどよりも早くそれは破られました。
天板の悲鳴。ココアの水面が揺れて、なのはさんは身を乗り出します。

「何で驚かないの!?」
「な、何で驚く必要あるん?」

逆に身を若干引きながら、はやてさんは返しました。
また、見開かれる蒼。追う、藍。

「えっ」
「えっ」

三度の沈黙が執務室を席巻しました。
ちびだぬき。
誰かがそう言っていたのはさておき、はやてさんの賢さは知識の面だけではありません。
一を聞いて十を知る。司令官として、捜査官として、その思考能力は素晴らしいものがあります。
何より、十年来の親友のこと。他のことよりもわかりやすいと言えば、そうなのでしょう。
八神はやて二等陸佐の聡明な頭脳は、答えを導き出したのです。
導き出して、しまいました。
握りしめていた拳を解き、はやてさんはスローモーションのように、ゆっくりとその両掌で、自身の顔を覆い、項垂れていきます。
完全に、閉ざされた視界で、吐き出されるのは殊更長ぁい溜息と、心の内。

「もぉやだこの親友」
「何でぇ!?」

悲鳴に近い声が返ってきました。






中途半端ァ!!!!!!!!








違うんだよ、Who am I ?とかシリアス書いた反動がですね……。
というわけで、こうやって気付いちゃってあわあわしてるなのはさんって可愛くないですか(真顔
ほいで、色んな人を巻き込んでフェイトちゃんに想いを伝えようキャンペーンですよ、まずは自分の気持ちを確立するとこからですよ、家族とか親友とか同僚とか色々混乱に陥らせてあわあわしてるような、こういう長編よみたいですよ、全てはきっとぶたいちょにかかってますよ、頑張れぶたいちょ、負けるなぶたいちょ、最終的にバニングスに頼るんだぶたいちょ
えっ、フェイトさんはどんな感じかって? ネガティブフェイトさんだけど……(当たり前のことを聞かれた顔で

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