ずるい、と、うらやましい



「ずるい」


人を惹きつける美貌と、エースオブエースと呼ばれる才。才色兼備。
そう称されるなのはさんが今、とても子供っぽい口調と、恨めしげな視線をもってしてそう呟いていました。
その視線の先には人影はなく、だからといって独り言でもなく、誰かに伝えるべく、確固たる意志を持ってその言葉を発していました。
その強い意志を真っ向から浴びせられている人物はというと。


〈・・・・・・・・・・・. Sorry.〉 申し訳ありません。


金色の光を発しながらどこか困惑した響きで謝罪していました。










闇を貫く雷神の槍。
夜を切り裂く閃光の戦斧。
最高峰のインテリジェントデバイス。
そう称されるバルディッシュは言わずもがな、かの金色の魔導師の相棒です。
そんなバルディッシュをまるで睨むような視線で見詰めながら、なのはさんは口を尖らせていました。


「ずるい」


さきほどから何度もバルディッシュに向けられる言葉はその一つだけ。
ずるい。ずるい。そう続けられ、理由も原因も解らないバルディッシュが困惑しながら謝罪の言葉を告げた回数が何度目になった頃でしょうか。なのはさんはちょっと涙目になっていました。


「バルディッシュ、ずるいッ!!」
〈・・・・・・・・・.Could you please tell me why?〉 恐れ入りますが、何故でしょうか。
「ずるいんだもん!!」
〈・・・・・・・・・・・・・・. 〉 


正直、だだをこねる子供です。
バルディッシュは黙することしかできず、ただなのはさんの言葉を甘んじて受けることになります。


「だって、いっつも一緒だし。いっつも頼られてるし。いっつも仲良しだし」


そして始まるなのはさんの、如何にバルディッシュがずるいかの力説。
デバイスであるからしてメンテナンスの時以外は傍にいることはもちろん、果ては同じ金色だし!!とかわけのわからない理由でまでずるい連呼です。


「お風呂の時も一緒でしょ!?ずるいよ!!」


さらにはこんなことまで言う始末です。
寡黙で表情も解らないバルディッシュがどうかはわかりませんが、きっとこの言葉を誰か他の人物が聞いていたとしたらその表情は、えぇえええぇぇぇぇ、みたいな心境を物語っていたことでしょう。なのはさんのかの親友ならば、紛うことなく罵声が飛んできます。


「私、付き合い始めてから一度も一緒に入ったことないのに!!入ろうとしてもダメって言われるのに!!何で!?」


それは明らかにバルディッシュのせいではありませんし、理由なんて知っちゃこっちゃありませんが、バルディッシュは黙ったまま。とても大人です。とてつもなく大人な対応です。なんという子供と大人。


「それにさ!バルディッシュの言葉は割と素直に聞くのに、私が言うとやだって言うんだよ!?どう思う!?膝の上においでって言っただけなのに!!」


頭を抱えてうめいています。
酔ってるのかといいたくなる言動です。
そして間違ってもバルディッシュはそんなこと言いません。
実は長年の想いを遂げて、バルディッシュの主とつい最近付き合い始めたなのはさん。何だか色々ありすぎて、大分ヒートアップしているようです。人はそれを鬱憤という。もしくはムラムラと呼ばれる何か。


「もー!!せっかく!!やっと!!今度こそ!!フェイトちゃん一人占めだと思ったのに!!」
〈・・・. Sorry.〉 申し訳ありません。


重ねて言いますが、バルディッシュが謝る義務は微塵もありません。
こんな口論が他の誰かに聞かれたら、とてつもなく問題な気がします。けれどこの場にはなのはさんとバルディッシュだけが居るというわけではありませんでした。
口論の原因というか議題というか、その人物はこの場に居ないわけではなかったのです。


〈And more work, wake sir.〉 動くと起きてしまいます。
「こんなんじゃ起きないって知ってるくせに」
〈・・・・・・・・・・・.〉


バルディッシュの忠告に、足をぱたぱた動かしながらなのはさんは反論します。
なのはさんの太腿を枕にして、それはそれは安らかに睡眠を享受している人物が居ました。


「私が何も出来ないのに、幸せそうな顔してるし。しかも可愛いし」
〈・・・・・・・・・・・・・.〉


そこには膝枕を堪能しているフェイトさんの姿。
その寝息は穏やか。眠りも深く。一度眠ってしまえば簡単には起きないという寝起きの悪さは今確実に最高峰のものになっていることでしょう。
なのはさんの服の裾を緩く掴んで眠るフェイトさん。その頭を撫でながら、なのはさんはもう一度呟きます。


「バルディッシュ、ずるい」


それは先ほどとは違い、小さな声で。
なのはさんは指に絡めた金糸と、幼い頃から変わらない寝顔を見詰めていました。


「あの人の、後継者なんだもん」


あの人。
かつてフェイトさんの全てであった人ではなく、かつてのフェイトさんの一番近くにいた人。
その人は、ある意味フェイトさんが全てであった人。フェイトさんを全てとした人。
バルディッシュさんの開発者。親。


「私と、比べられるわけないから、勝てないんだもん、絶対」


競う以前に、比べられるものではないのですから。つまりそれはどんなに足掻こうが、決して勝てないということ。決して、その領域に達することが出来ないということ。
フェイトさんの心に存在する、その人が居る領域に辿り着くことが出来ないということ。
そしてその領域は、バルディッシュがの場所のすぐそばであるということ。


「ずるいよ」


フェイトさんの頬を優しく撫でるなのはさんに対して、寡黙なデバイスが口を開きます。


〈I envy you.〉 羨ましい。


私事を口にしないバルディッシュのこの行動は、主さえも目を丸くするとても珍しいことであり、なのはさんにとってすれば初めてのことでした。


〈I envy you.〉 貴女が羨ましいです。


その感情の対象とされたのはなのはさんであり、その感情を抱かせた原因はフェイトさんであり。


〈I can not touch.〉 私は触れられない。


バルディッシュが抱える、唯一の不満でした。


〈Can be touched. But the reverse is impossible.〉 私から触れることが出来ない。

〈Not all. Can lay a blanket. Be carried to bed. Can split the warmth.〉 毛布を掛けたり、ベッドに運んだり、ぬくもりを与えたり。全てが、不可能です。

〈Magic must be exercised, not help much.〉 魔法がなければ、何もできない。


フェイトさんに触れる指先も、フェイトさんにかけられたブランケットも、フェイトさんに伝わる体温も。全てが、バルディッシュにとって届くことのないものでした。
それこそ、祝福の風とは違う、インテリジェントデバイスであるバルディッシュにとって、どんなに望んでも、足掻いても、決して触れることが出来ないもの。


〈But you can.〉 ですが、貴女は違う。


一番近くに居るのに、触れることが出来ない。


〈I envy you.〉 羨ましい。


それが、バルディッシュのなのはさんに対する、羨み。
ただ驚きに呆然とその言葉を聞いているしかなかったなのはさんは、我に返り口を開こうとしますが。


〈Please forgive my rudeness.〉 今のことは、忘れてください。


バルディッシュに遮られます。
こう言われてはもう、何も言えません。否定も、肯定も、確認も、疑問も。全て言うことが出来なくなったなのはさんは嬉しいようなむくれたような表情をするのみです。
そんななのはさんにバルディッシュは続けます。


〈If there was one more to say.〉 ただ、一つお伝えすることがあるとすれば。


そこで図ったかのように、フェイトさんがむにゃむにゃと何事かを呟いたかと思えば、口から洩れたのは名前。


「りにす・・・」


それはもう、はっきりと。
バルディッシュは、それはもうきっぱりと告げました。


〈There are above me.〉 私も越えられません。
「・・・・・・・・・・・、ずるいいいいいいいいいいいい!!」


フェイトさんは、まだ、起きません。



多大な願望が詰まったバルディッシュさんについての妄言。



気持ち悪いですよ、アーユーレディ?
あのね、バルディッシュさんも人型になれればいいと思うんですよ。色々な想像があるとは思いますが、私のバルディッシュさん像は寡黙なジェントルマンです。ほんのり癖のある黒髪に、金色の鋭い瞳、あ、瞳は猫みたいに瞳孔が縦に長い感じでね!ほんで、身長が180からいやもう190くらいあればいいと思います。細く見えるけどがっつり筋肉質。ザフィーよりは筋肉ない感じでね。もちろん美形です。当たり前ですね!!かなり身長が高いってところがポイントです。ほら、幼フェイトさんが寝むちゃった時に抱える時とかね!すっぽりって感じじゃない!!あと何か足くじいたとかそういう時は片手で、こう、胸元にすわらせるような、そんな感じで抱き上げてほしい!!わかる!?わかるよね!?あと獣型とかにもなれればいいと思うんですよ。これも色んな想像があると思いますが、私は黒い狼で一択。かの有名な黙れ小僧!っていう台詞を言った狼くらいな大きさを希望。アルフさんが遊びと妹担当だとしたら、バルディッシュさんは警護とお世話担当です。想像してごらんなさい。黒い狼が伏せの状態で、それに凭れるように幼フェイトさん、さらに幼フェイトさんにじゃれる幼獣アルフさん。ほら!!!完璧!!!!!!わかるかね!!!!!完璧だろう!!!!ああもう誰かこういう設定で書いてくれないかなっていうか書きてえええええええええええええええ!!!!!
ハラオウン家に養子入りしたという綺麗な少女が局の野外訓練場に一人ぽつんと立っていた。少女の背後には森での戦闘を想定した訓練をするための区画、樹木が茂り風が葉を震わせている。その風に遊ばれた金色の髪を手で押さえ佇む少女は、それはそれは可憐。子供特有の幼さとどこか神秘的な大人っぽさ。局員たちがそれに目を奪われ、その中の一部が少女に近づこうとする。しかしそれは失敗に終わることとなる。いつものように。金色の光を軌跡に残し、少女を包むように傍ら現れた漆黒の獣。その金色の瞳は近づこうとしていた局員を射抜いていた。バルディッシュ。少女が小さく呟き、その獣の黒に触れる。美しい少女に傅く美しい獣。それは一枚の絵画のようだった。
こういうの書きてえええええええええええええええ!!!!!!
はい、ごめんなさいね。
あ、そうそう、ちなみにレイハさんは美女です。ほんで白い豹とかだったら私得!!!!!!


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