誰にも



小刻みに震える白い腹が、なんと艶やかなことか。
口付けていた場所から舌を離せば、糸を引いて落ちた。
舌舐めずり。口元がべちゃべちゃだ。袖を手繰り寄せて、拭う。
薄い茂みから腹の窪み、鳩尾から揺れる二つの丸み、上下した喉。頤。出入りを繰り返す呼吸の荒さ。
ねえ、こっちを見て。
身体を起こして、目の前の裸体に沿うように登る。
心臓の上に唇で触れると、駆け上がったままの心拍。口端が緩んだ。君の心を動かせるなんて、とても素晴らしいこと。
脚の間に身体を置いたまま、君を見上げる。身長だけは負けたことがない私が、君を見上げるのは、空と、今。

なのは

ゆっくりと蒼が私に焦点を合わせる様を見る。乱れた息に私の名前を読みとる。
うまく形にならない音を聞く。声を得る。私でいっぱいになる君が、愛おしい。
枕の端を握りこんでいた指が緩んで、気だるげに伸ばされた腕。
その指先が髪に、首裏に差し込まれるのを待って、引き寄せようとする腕に力が入らないのを感じる。
知ってるよ。唇が欲しいんでしょう。君はいつもそうだもの。
水に濡れた声がする。名を呼ばれる。どっちに濡れてるの。知ってる。
丸めようとした背に、まだ震えて上手く起こせないそれに腕を回す。近づける。
後の、触れるだけの口付けが、君は好き。
でも知ってる。
肌蹴た服の隙間。私の下腹部が触れたそこ。震える君の一番奥の場所が、教えてくれる。

もっと、

熱に浮かされた声がした。濡れた唇を君の熱い息が溶かす。
背筋がびりびりする。腰の奥に、熱が溜まる。可愛い。可愛い。誰よりも。私の。
肩甲骨から肋。脇腹から臍の下。触れる。撫でる。震えた。
ぎゅう、と力の籠もる腕に、笑みが浮かぶ。

どれがいい

覗きこんだ蒼色。私の下腹部に触れたそこがきゅうきゅう撓る。潤んで零れる。
きもちいい。知ってる。
喉に唇。膨らみに掌。頂きに牙。尖りに舌。
してあげたよ。させてもらえたよ。
それじゃあ、どれがいい。
あとは指先。
どこにほしい。どこが許される。
腕が首から背中。肩から腕。腕から掌。指が、絡む。

これ、が、いい

紅色を見詰めた蒼色。
疼く。震える。溢れて零れる。
良く出来ました。良く言えました。良くしてあげましょう。
許しをもらえた私の一部を、君の一番奥の奥。大事な大事なところへと。
見上げたままで、見詰めたままで。
ねえ、今度はちゃあんと見ててあげる。
見せてくれる。
見ながら、してあげる。

なのは

私しか見れない君の艶姿。


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