首輪購入を真剣に考える高町なのはさん(15)



起。メンテナンスしていたレイジングハートたちが帰ってきました。
承。略。
転。略。
結。フェイトちゃんが犬になりました。


「どうしてこうなった」


クロノ君に連絡を入れて、現状維持というどうにもならない指示を受け、モニターを閉じる。
フェイトちゃんが犬になった。
いや、人間なんだけど。比喩とか、そういうんじゃなくて犬になってしまった。
体は人間、だけど付属品というか、つまり、アルフさんみたいに耳と尻尾がついた。そこまではいい。そこまでは。ミッドチルダというか時空管理局ではよく聞くことだ。いやよくはないけど。
問題は、中身である。
とりあえず落ち着くべく、そして連絡を入れるべく、私はフェイトちゃんの自室からリビングに移動していたわけだけど、現状維持という命を受けたからはちゃんと対象を保護管理する責務がある。これは責務です。なのでフェイトちゃんが待つ部屋に戻ります。スキップで。別に楽しんでいるわけじゃありません。犬耳フェイトちゃん、可愛いよね。


「フェイトちゃんお腹へってnきゃーーーーーーーーーーーー!!!!」


とってもご機嫌な私の目に飛び込んだのは金色と肌色でした。


「ちょ、なに、なにしてるの!?」


目のやり場に困りながら、家には誰も居ないというのに急いで扉を閉める。
なんていうか、つまり、裸体フェイトちゃんがそこにいた。オプションは黒い犬耳と尻尾。あれ、なにこれ天国。


「なに、どうしたの!? ちょ、これ着て!!」


シーツを引っつかんでフェイトちゃんに被せる。
ぺたんと座り込んでこちらを見上げて首をかしげているその姿を全力で気にしない方向に、ベッド脇を見れば。


「うわぁ」


雷撃を受けたのかそこには焦げて朽ちた服だったもの。そういえば、焦げ臭い。
ばさりと言う音を聞いて見れば、シーツを咥えて剥ぎ取るフェイトちゃん。ぶるぶると頭を振っている。
しばらく沈黙して、納得。


「ああ、犬って、服着ないもんね……」


着るこも居るけど、着るのがいやな子ももちろんいるわけで。フェイトちゃんはそっちタイプなのだろう。
私はこっちを見て尻尾を揺らすフェイトちゃんを見下ろす。
所謂髪ブラとかそういう類。トップシークレット部位が髪で隠れているというこの非常にアレな状態。しかもフェイトちゃんのわがままぼでぃでそれをやられてみてください。思わず喉が鳴ります。これは仕方ない。でもこの状態はよろしくない。私は見るけど私以外に見せられない。見せるものか。
私は黒いパーカーを手に、努めて笑顔でフェイトちゃんの前にしゃがみこんだ。


「フェイトちゃーん、服着よう?」


ぷいっと顔をそらされた。
いやですか、そうですか。
でも私だって犬のしつけの仕方ならちょっとはわかる。感謝すべきは親友。アリサちゃん、今度すずかちゃんから聞いたのろけ話を延々語ってあげるね。
私はパーカーを無理くりフェイトちゃんに被せた。
もちろん、嫌がるんだけど。


「わー! フェイトちゃん服着るとかわいー! えらいねー!!」


わざとらしいくらいに、褒める。褒める。褒める。
もーさいこー、と。これかわいー、と。曰く。褒めて覚えさせろ。これが鉄則。
頭撫でたり褒めちぎったりしていると、変化が見えた。フェイトちゃんの尻尾が揺れたのだ。え、これ着てるとなのは嬉しいの。とばかりに。そうそう、嬉しいです。だからほら、袖に腕通してー。うわー、すんごくかわいー。たまりませんわー。軽い疲れを覚えながらどうにかこうにかパーカーを着せて、一息。
そこでふと思う。
下着、どうしよう。
上はまあ、いい。でも下はどうしよう。いや、今と同じ方法でいけるか。いやしかし。私が、その、えっと、装備させなければいけないというわけである。いや別に、お風呂とかで裸見慣れてるって言えばそうですけど。それ以外でも見てますけど。それとこれとは話が違うというか。いや一緒だからこそアレだというか。なんていうか。
ぐるぐる考え始めた私が気づいたときには、フェイトちゃんの顔が目の前にあった。


「ん、っぷぁ、ちょ、ふぇい、んっんー!」


舐める。
舐める舐める舐める。
口を中心にぺろぺろというか、べろべろと。あ、そうですね。舐めるよね、犬って。体格は人間のときと同じなので、私より背の高いフェイトちゃんが圧し掛かってくるのを支えきれるわけもなく、押し倒されてさらに舐められる。
口の中に舌が入ろうが気にしない。抵抗しようにもがっちり押さえつけられていて、どうしようもない。
ひとしきり舐めて気が済んだのか、少し離れて、フェイトちゃんは飛び切りの笑顔を浮かべた。


「ぅわん!」


やだなにこれかわいい。
尻尾がぶんぶん揺れているのを視界の端に収めながら、なんだか笑えてきて、フェイトちゃんの頭をくしゃくしゃに撫で回せば胸元に頭を押し付けてきて、さらに撫でる。きゅーんだかくぅんだか、小さく鳴いているのが最高に可愛くて、撫で回していると、音声通信。
そこには、同じく管理局勤めの親友の名。もしかしたら対処法が見つかったのかと思って通話を開始し。


“フェイトちゃんが犬耳と聞いて飛んできました(キリッ”
「こないでください」


通信を切った。





つづかねぇよ!


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