しつけたわけじゃない
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絢瀬姉が好きすぎた
久し振りのどストライクです
呼び方とか他いろいろマガジンとアニメで混じってるカオス
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「次体育なんやねー」
「この時期って長距離じゃなかった?」
「うわぁ、思い出したくない」
たまたま一緒になり、廊下を進んでいた三年生組が見つけたのは、グラウンドにいる二年生組でした。
今日は天気が良く、開いていた一階の窓に寄って見詰めた先。
笑っている人と、苦笑している人。その周りをくるくる走り回っている人。
「あはは、わんこみたいやなぁ」
周りの生徒たちにもちょっかいを掛けながら走り回るその姿は、犬の尻尾と耳がとても似合いそうです。
「えりちが呼んだら来るんやない?」
後ろ手を組んで、上目遣いで見詰めてくる東條さん。
「それこそ犬みたいにね」
窓縁に腕を乗せて凭れながら振り仰いで見てくる矢澤さん。
「そんなわけないでしょ」
そんな二人の視線に溜息をつきながら返す、窓枠に手を掛けていた絢瀬さん。
けれどもどこか笑いを含んだ視線は途切れることがなく、絢瀬さんはさらに溜息。
試したところで結果なんてわかってはいるけれど。
そう思いながら、視線をグラウンドに戻して。
「穂乃果」
決して届くことはないであろう声量で、その名を口にしました。
するとどうでしょうか。
くるくると忙しなく動いていたその人がぴたりと止まり、きょろきょろと視線を巡らせた後に、こちらを見たのです。
不思議そうにしていた顔が、変わります。その表情の変化と言ったら、なんというか、御馳走様というか。
あとはもう、言うまでもなく全力疾走。
ぽかんと三年生組が見詰める中で、ぽかんと二年生組が見送る中で、その人は、窓のすぐ傍まで駆けてきて。
「絵里ちゃん! 呼んだ!?」
息を切らしたまま、そうやって絢瀬さんを見上げていました。
「あっ、希ちゃんににこちゃんも! 呼んだ!?」
それから一緒にいる二人にもそう言って。
「あれ?」
首を傾げます。
東條さんはにこにこしたまま何も言わず。矢澤さんは顔を腕に埋めて肩を震わせ。絢瀬さんは口元に手をやって俯いてやはり肩を震わせていました。
どうしたの、とさらに首を傾げる高坂さんが見詰めること少し。
「はー……」
やっと反応を返してくれたのは、絢瀬さん。
長く息をついて、上げた顔にはまだ笑いが残っていました。
「穂乃果はほんと……」
「んん?」
「何でもない」
建物の中と、外。
いつも以上の身長差を埋めるように、絢瀬さんの腕が伸びます。
「体育頑張ってね」
その手が、高坂さんの頭を撫でます。
慣れた仕草でした。
「うんっ」
返ってきたのは、満点の笑顔。
それから見送ったその後ろ姿。
「わんこやなぁ」
尻尾がぶんぶん揺れているように見えたのは、気のせいなのでしょうか。
「こっちこいは犬の王道よねー」
「にこっちも言うたったらええんやない?」
「何が?」
「あー、あっちは猫やもんなぁ」
「だから何が!?」